2010/04/25

ジャンルー・シーフ 「Unseen & Best works」



髪の毛のさらさら、ニューヨークのビルのごつごつ、
ドレスのドレープが織り成す陰影、草、木、そして肌。皺。

「手触り」を表現することに関しては、
写真、絵画、文学、映像、どの表現ジャンルも
それぞれの作家がそれぞれ挑戦してきたのだろうとは想像するけれど、
やはり写真、とりわけ銀塩モノクロ写真に勝るものはなかなか無いように思う。

というわけで、そんなモノクロ写真のお手本のような写真がずらり~。
手触りどころか、匂いまで香ってきそうな写真群でした。

そんな作家の姿勢は、作家自身の以下の言葉に凝縮されている。

僕は神の存在を信じない。しかし女性の存在そのものが、すでに神の存在を証明していることになるのかもしれない。そして写真はそれを証明する手段だ。空を見上げたときに気づくある色、そこはかとなく漂うある不思議な香り……(中略)……17歳の少年のころには、これらの嗅覚と感情の高まりをぼくは詩に書いて、翌日にはそれを破り捨てていた。なぜなら、そのときの感情は消え失せ、ただの言葉の羅列にすぎなくなってしまっていたから。それからぼくは写真を始めた。写真は時に私が表したいと願った欲望をそのまま生き続けさせ、静かにあるひとつの世界をつくる
(展覧会 図版より抜粋)


であるからして、彼の表現は当然フェティッシュそのもの。
彼の「欲望」は写真というジャンルだからこそ体現される。
東京都写真美術館で同時開催中の森村泰昌との対比が眩しい(乱暴なまとめですみません)。


ジャンルー・シーフ 「Unseen & Best works」
2010.3.27[SAT]-2010.5.16[SUN]
東京都写真美術館
http://syabi.com/contents/exhibition/index-22.html